E-ディフェンス

今月のピックアップ加振実験映像This Month's Featured Shaking Test Video

毎月15日頃に、過去の加振実験映像を1つピックアップして、解説しています。

  • E201505 : 地盤・杭の地震被害モニタリング技術検証のための振動破壊実験
    解説

    建設する建物の重量に対して、建物下の地盤が軟弱で強度が不十分だと、建物が沈下・傾斜してしまいます。そのため、地盤の強度を高めたり(地盤改良)、適切な建物の基礎構造を選定したりすることにより対策します。建物下の軟弱地盤が厚い場合、最も一般的な対策の一つとして、柱状の「杭」を固い地盤まで建て込む工法があります(図1)。
    地震が発生すると、地盤が水平方向に変形して杭に水平力が作用したり、建物が地震で揺れることによって大きな水平・鉛直方向の力が杭の頭部に作用したりします。大地震では杭に作用する力が大きくなり、杭のコンクリート圧壊・引張ひび割れ、降伏・座屈が発生してその強度を喪失します。杭強度の喪失に伴い、杭に支持されている建物に顕著な沈下・傾斜が発生する場合は、杭にも大きな損傷が発生していることは明白ですが、建物に目立った損傷がなくても、杭に顕著な損傷が発生している事例も多数報告されています。例えば、ある建物を解体する際に杭を掘り起こしたところ、過去の地震で杭に顕著な損傷が生じていたことが明らかとなりました。その建物は、数十年の間、何もなかったかのように使用されておりましたが、再度大地震が発生していたら、甚大な被害が発生していた恐れがあります。したがいまして、建物を支えている杭の損傷程度は、建物の残留耐震性能や継続的な使用可否を左右するものと言えます。しかしながら、杭は地中に埋設されているため、その損傷度を目視調査で判定することはできません。
    以上のことから、都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクトの一環として、京都大学防災研究所および大成建設との共同研究で、地震による杭の損傷度を評価するためのモニタリング技術の開発・検証を目的としたE-ディフェンス実験を実施しました。
    直径8m、高さ6mの円筒形土槽の中に、鋼管杭と鉄筋コンクリート杭(RC杭)の2種類の杭を設置して、その周辺に砂を投入しました。砂を所定の高さに仕上げた後、建物に相当する錘を設置しました(図2・図3)。地震による損傷を検知するため、2種類の杭のうち、RC杭には様々な種類のセンサーを設置しました。E-ディフェンス震動台を用いてこの試験体に地震動を加え(E201505_151020_4.mp4)、各種センサーの計測値を注意深く確認しました。
    実験映像では、地表面より上の部分しか確認できないため、目視で損傷を確認することはできませんでした。実験終了後に杭周辺の地盤を撤去して、杭の損傷を確認したところ、杭頭部のコンクリート剥離が確認されています(図4)。RC杭に設置した様々な種類のセンターのうち、光ファイバセンサーがこのコンクリート剥離に相当する大きなひずみを検知しました。以上のことから、適切なセンサーを選定することにより、地中の見えない部分の損傷を評価できるポテンシャルが確認できました。一方、この方法では光ファイバセンサーを杭に直接設置する必要があるため、既存の杭への設置方法など、実装・普及までには解決すべき課題が残されております。コストや設置方法を含め、より良い方法の開発・検証を進めてまいります。

    本実験の詳細情報や取得データ・映像は、ASEBIにて公開されています。
    DOI: https://doi.org/10.17598/NIED.0020-E201505

    更新日:2026/04/17

  • E201303 : 地震によって損傷を受けた鉄骨建築物の耐震安全対策に関する実験研究
    解説

     1995年の兵庫県南部地震では,鉄骨造建物の柱と梁の接合部(柱梁接合部)で,梁が破断する事例が日本国内で初めて確認されました。このような被害を受けた建物は,地震後の傾きが小さく,外装材の被害もあまりみられないことから,地震後の外観目視検査で接合部の損傷・破断を発見することは困難です。しかし,柱と梁の接合部は,構造上きわめて重要な部位であり,その損傷は建物全体の安全性に大きな影響を与えます。したがって,地震後にこのような目視での発見が難しい損傷を検知して,建物の健全性を評価する技術が必要です。この研究では,柱と梁の接合部に損傷を受けた鉄骨造建物がさらなる大地震にみまわれた場合の被害の把握と,大地震で損傷を受けた建物の健全性を推定する為の技術開発を目的として,実大鉄骨造建物を対象とした震動台実験を行いました。

     実験計画にあたり,兵庫県南部地震で被害を受けた鉄骨造建物を調査して,対象を3階建ての鉄骨造建物としました。神戸市内に建設された事務所建物を想定して,1981年の耐震規定に従って試験体建物を設計しました。

     兵庫県南部地震で柱梁接合部の破断を生じた建物が,大規模地震に見舞われるシナリオを想定して,実験手順が計画されました。実験ではまず,比較のために,損傷の無い鉄骨造建物に想定大規模地震動を入力します。その後,兵庫県南部地震で観測された地震動を,強さを少しずつ大きくしながら柱梁接合部に破断が生じるまで入力します。そして,柱梁接合部に破断が生じた後に,再び想定大規模地震動を入力します。兵庫県南部地震の地震動は,JR鷹取波を採用しました。想定大規模地震動は,南海トラフ地震での神戸市の揺れを想定して作成しました。JR鷹取波と想定大規模地震動の計測震度は,それぞれ6.3と5.4です。

     実験では,JR鷹取波の加速度振幅を40%,60%,80%に縮小して入力しました。実験の進行に伴い変形が繰り返されて,JR鷹取波の100%を入力した実験で,柱梁接合部が破断しました(建物全体の揺れ:E201303_131010_08_31.wmv,接合部の破断:E201303_131010_08_17.wmv)。その後,想定大規模地震動を,50%,100%,150%の強さで入力しました(150%入力時の建物全体の揺れ:E201303_131015_10_31.wmv)。

     各地震動の入力後に計測した建物の傾きは,いずれの地震動入力後も小さく,このような破断を外観の目視検査で発見することが困難であることが確認されました。柱梁接合部破断後に大規模地震動を入力しても,今回の実験では建物の倒壊等の重大な事象には至りませんでしたが,破断前後で地震による変形の大きさが約2倍になっており外装材の落下等の危険な被害が発生し得ると考えられます。また,柱梁接合部の損傷を検知する技術についても検討が行われました。柱梁接合部の破断によって,建物の揺れの周期が明確に変化すること,および建物に常時生じている微小な揺れや,小型の機械で建物に与えた揺れから建物の揺れの周期を計測可能であることが確認されました。

     この研究は,兵庫県と防災科学技術研究所の共同研究,および兵庫県と神戸大学の協力型共同研究として実施されました。関係の皆様に,感謝申し上げます。


    本実験の詳細情報や取得データ・映像は、ASEBIにて公開されています。
    DOI: https://doi.org/10.17598/NIED.0020-E201303

    本実験の詳細な報告書は,兵庫県のホームページでも公開されています。
    https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk41/e-defenseh25.html

    更新日:2026/03/15

  • E202102 : 水道管路の耐震補強継手の大型振動台実験
    解説

    令和6年能登半島地震能登半島地震により,上下水道が広範囲に機能不全に陥り,被災地での生活に深刻な影響を及ぼすとともに,復旧・復興の長期化へと繋がりました。また,同月28日には,埼玉県八潮市において,下水道埋設管の損傷に起因した大規模な道路陥没事故が発生し,1年後の2026年2月現在でも復旧工事が続いています。2026年1月には,国土交通省が,こうした水道管路の耐震補強・老朽化対策を目的として,災害時の支援拠点となる病院、避難所等に繋がる水道管路を中心に,耐震基準を見直す方針であることが報道されています。
    一方,基幹水道管路のうち耐震性のある管路の割合は,令和4年度末時点で42.3%と低い状況にあり(※1),今後の災害時の安定的な給水と早期復旧可能な体制確保のためには,地中埋設管路の耐震補強を速やかに推進することが喫緊の課題となっています。過去の地震における,埋設管路被害を検証すると,例えば,2011年東北地方太平洋沖地震では,代表的な水道管路であるダクタイル鉄管の被害原因は,管が継手部で抜けてしまうことによるものが約7割を占めています。したがって,管の継手部を補強して抜けにくくすることが,効率的な補強方法であることがお分かりいただけると思います。以上のことから,大成機工株式会社,金沢大学との共同研究の一環として,地盤中に埋設された実物大のダクタイル鉄管を用いた水道管路を対象としたE-ディフェンス大型振動台実験を実施しました。 実験では,傾斜地盤の中に,未補強継手および耐震補強継手を有する水道管路試験体を設置しました。継手の耐震補強方法として,バイパス管路を設置せずに,継続的に周辺地域に給水することが可能な工法を選定しました。この試験体にE-ディフェンス震動台を用いて地震力を加えることにより,意図的に斜面を崩壊させて,継手部周辺に大きな地盤変位を作用させました(E202102_211026_1.wmv)。その結果,未補強継手は抜けて,周辺の土が管内に流入することにより,ライフラインとしての機能は完全に喪失しました(E202102_211026_3.wmv)。一方,耐震補強継手では,継手が離脱することなく,管内への土の流入は確認されませんでした(例:耐震補強金具を用いた管内映像,E202102_211026_2.wmv)。実験後に,管内に水圧をかけたところ,継手部の損傷による圧力低下や漏水は検出されず,水道管路としての機能を維持していることを確認いたしました。
    この実験研究の成果が,水道管路の耐震補強の推進の一助になれば幸いです。また,実験にご参加いただいた大阪市水道局,岡山市水道局,神戸市水道局他の関係機関にもご協力いただきました。ここに篤い謝意を表します。

    ※1:国土交通省,水道事業における耐震化の状況(令和4年度)
    https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply/newpage_38800.html

    ASEBIにて,詳細な実験データを公開しています。
    DOI: https://doi.org/10.17598/NIED.0020-E202102

    更新日:2026/02/16

  • E200505 : E-ディフェンスによる既存不適格建物補強・無補強実験
    解説

    昭和56年の建築基準法改正以前に建てられた,古い木造住宅の倒壊現象の再現および耐震補強工法の開発・検証を目的として,2005年11月,2棟の木造住宅試験体を対象としたE-ディフェンス実験を実施しました。
    実験で使用した2棟の試験体は,実在の築32年の木造住宅(木造軸組工法)で,同じ構造仕様及び間取りで建てられたものです。この2棟を丁寧に解体して,部材を運搬,E-ディフェンス震動台上で再組立てすることで「移築」しました(写真奥行方向がX方向,写真横方向がY方向)。1棟は何もしない「無補強試験体」(写真右),もう1棟は梁柱接合部の補強金物,構造用合板,筋交いを追加設置することで耐震補強を施した「耐震補強試験体」(写真左)としました。「無補強試験体」の評点※1は,1階は1.17(X方向)および0.50(Y方向),2階は1.23(X方向)および0.85(Y方向)です。一方,「耐震補強試験体」の評点は,1階は1.97(X方向)および1.84(Y方向),2階は1.94(X方向)および2.01(Y方向)となっており,大幅に耐震性が向上しています。
    1995年兵庫県南部地震において,JR鷹取駅で観測された地震動(震度7相当)で加振したところ,「無補強試験体」が完全に倒壊しました(E200505_051121.wmv)。このような住宅1階部分が倒壊する現象は,兵庫県南部地震でも数多く発生しましたが,それから約30年経過した2024年能登半島地震でも確認されております。「耐震補強試験体」は,倒壊は免れましたが,構造用合板の浮上りやはずれ,筋かいのはずれ,金物の緩みなどが確認されており,損傷状況を評価して,評点を再計算したところ,1階で0.93(Y方向)となりました。
    その後,倒壊した「無補強試験体」を撤去して,損傷した「耐震補強試験体」を再度JR鷹取駅で観測された地震動で加振すると,「無補強試験体」と同様,完全倒壊に至りました(E200505_051124.wmv)。
    近年の大規模地震では,繰返し大きな地震動の発生が観測されております。複数の地震動により,建物の損傷程度が蓄積されることがありますので,お住いの住宅の耐震性能を的確に把握して,状況に応じた対応をシミュレートしておくことが重要です。

    ASEBIにて,詳細な実験データを公開しています。
    DOI: https://doi.org/10.17598/NIED.0020-E200505

    ※1:評点は、保有耐力/必要耐力で算出します。1.0で新耐震基準を満たす最低限の耐震性能、1.5以上で「倒壊しない」と評価されます。また,1.0未満の場合は倒壊の可能性が高いことを示します。

    更新日:2026/01/15