今月のピックアップ加振実験映像This Month's Featured Shaking Test Video
毎月15日頃に、過去の加振実験映像を1つピックアップして、解説しています。
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E202201 : 高精度シミュレーションモデル構築に向けた配管系加振試験

解説
防災の日や311が近づくと、テレビの特集などでE-ディフェンスの木造建物や高層建物の実験映像が流れます。「耐震実験」と聞いたとき、多くの人が思い浮かべるのはこのような実験だと思います。
一方で、社会には産業施設で使用されているタンク類や配管、クレーンなどさまざまな構造物が存在しています。地震時にはそれらも等しく大きな揺れにさらされ、時に深刻な被害を生じます。従って、このような構造物の耐震性確保も重要な課題です。E-ディフェンスでは、このような、機械設備類に分類される構造物を対象とした実験も多く実施されています。今回の特集記事では、そのうちの一つを紹介したいと思います。
紹介する実験は2022年8月に実施したもので、原子力発電施設で使用される配管系を想定しています。
現在の原子力発電施設の耐震設計では弾性解析に基づく耐震設計(弾性設計)がされています。弾性解析では保守的な評価が可能という利点がある一方、現実世界の応答で現れる、摩擦や弾塑性変形などのさまざまな非弾性挙動を精度良く再現するという点では十分ではありません。近年では設計の想定を超えた条件(Beyond Design Basis Event、いわゆるBDBE)に対する配慮が求められるようになっています。しかし、設計で使用されるような解析モデルでは非弾性挙動を考慮できないため、BDBE下の挙動を適切に評価できるような、高精度の解析モデル構築が必要です。そして、そのためには、解析モデルの妥当性を検証する実現象のデータが不可欠です。
このような背景に基づき、発電施設の重要な設備の一つである配管系を対象に加振試験を実施しました(写真1)。この試験では、非弾性挙動を評価する解析モデルの検証に使用できるよう、配管系が損傷するまで(終局状態)のデータを取得することを目的としました。
試験体は、6 m×3 m×4 m程度の規模の炭素鋼鋼管STPT370、100Asch40(外径:114.3 mm、肉厚:6.0 mm)で製作された配管系試験体1体です。具体的に実機配管のルートを模したものではなく、分岐管や曲管、支持構造物を含む、配管系の一般的な特徴を反映し、加振試験用に設計した試験体です。試験体の一部には注水し、約7 MPaの内圧を負荷しました。
加振試験では、試験体の応答が大きく出やすいような特性を持つ模擬地震波を用いた地震波加振(三軸同時加振)と、試験体の損傷を目的とした、一方向の正弦波加振を実施しました。地震波加振では小さい加振レベルから徐々に入力を大きくし、試験体の弾性域~弾塑性域までの応答特性、ひずみの蓄積過程などのデータを取得しました。最終的には、正弦波加振により、試験体の分岐管部分でき裂が貫通しました(2607_MPV )(写真2)。(*本実験では、終局挙動を調査するため現行の耐震設計で許容されるよりもはるかに大きな入力を与えていることはご注意ください。)
本研究では、最終的には解析モデルの高度化を目指しました。そのため、加振試験で得られる試験体の振動応答データに加え、分岐管部の肉厚計測、試験で生じた配管の局所的な膨らみの計測なども実施しました。その結果、分岐管部の肉厚分布を解析モデルに取り入れることで、損傷箇所を精度良く評価することができました(図1)。また、得られた加振試験データに基づき解析の不確かさ評価なども実施しました。
E-ディフェンス実験の成果は解析モデルの高度化に加え、規格・基準類の整備に活用することもできます。今後もさまざまな構造物に対する実験を進め、構造物の耐震安全性の向上に役立てていきたいと考えています。
(謝辞)本研究は、文部科学省原子力システム研究開発事業「地震荷重を受ける配管系の非弾性を考慮した高精度シミュレーションモデルの構築」(課題番号:20354338、2020年度~2022年度、研究代表者:中村いずみ(防災科研)、研究分担者:澁谷忠弘(横浜国大))により実施したものです。研究を支援いただいた関係各位に記して感謝申し上げます。
(文責:中村)
本実験の詳細情報や取得データ・映像は、ASEBIにて公開されています。
DOI: https://doi.org/10.17598/NIED.0020-E202201更新日:2026/07/15
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E201601 : 近年の大規模地震における木造住宅及び工作物の耐震性能評価試験

解説
「地震に強い家」の重要性
災害が起きた時に、人は誰もが「自分は大丈夫」「自分は死なない」「なんとかなる」と考えています。これは自然災害などで自分の身が危険に晒される状況下にあってもリスクを過小評価してしまう認知特性で「正常性バイアス」と呼ばれます。しかしながら、実際には耐震性の低い家は倒壊し、逃げ遅れれば倒壊に至らずとも、損傷した室内で大怪我をすることもあります。こうなってからでは取り返しがつきません。ではどうすればよいのでしょう。答えは一つ、「本当に大丈夫」と言える家を作ることです。
新築住宅の耐震性能向上
地震大国において、まず取り組まなくてはならないのが耐震性の向上です。現在の建築基準法では木造住宅の耐震基準が厳格化され、いわゆる「新耐震」を満たしていれば近年の大地震に対して倒壊の危険性は低いとされています。しかしながら、倒壊しなければそれでよいのでしょうか。もちろん人命が確保されるのは一番大切なことですが、建物の損傷が大きいと室内で大怪我するリスクが高まり、住宅ローンを支払いながら損傷した家の補修費を捻出していくという、「生き長らえたからこそ背負っていかなくてはならない現実」が待っています。
そこで構造躯体はもとより、内装、外装、屋根、開口部、住宅設備などあらゆる住宅部材を大地震に対して無損傷のレベルに抑え、その後も通常通りに暮らせる住宅の開発を行いました。「建築基準法を上回る耐震性能」を追求したその成果が「2倍耐震住宅」と「免震住宅」です。
2倍耐震(耐震等級5)住宅は、建築基準法による設計基準の2倍の水平強度を確保した家です。パネル化された高強度の外壁と床、天井を金物で強固に接合することで、住宅全体が箱型の6面体(ツインモノコック構造)となり(図1)、あらゆる方向からの力に対して建物の変形を極限まで小さくします。さらに、特殊なミッドプライウォールと呼ばれる高強度の内壁をバランスよく設置して建物のねじれを減らし、住宅部材の損傷を防ぎます。つまり、地震の力をそれ以上の建物強度で「耐えて押さえ込む強さ」と言えます。
一方、免震住宅は基礎と建物の間に免震装置(免震層)を挟み込んだ家です(図2)。地震時には免震装置が建物の荷重を支えながら水平変形することで地震力を逃がして建物部分の変形を小さくすると同時に、激しい揺れをゆっくりとした揺れに変化させて室内の家具、什器類の転倒・飛散も防ぎます。つまり、地震の力を免震装置で「いなして抑える強さ」と言えます。
E-ディフェンス震動台を用いた実物大木造住宅の振動実験
2倍耐震住宅や免震住宅の研究開発において、屋根材、外壁、内壁、家具や家電、収納内部まで再現し、生活荷重を考慮した「リアルな建物」を世界最大級の震動台・E-ディフェンスで繰り返し加振することで、「本当の耐震性能」を確かめました(図3)。
2倍耐震住宅の加振実験の状況をご覧ください(2606_MPV1 )。住宅の剛性が非常に高く、地震に対してほとんど変形が生じていない様子をご確認いただけると思います。1995年の兵庫県南部地震や2016年熊本地震で観測された巨大地震を加えても、建物は損傷せず、石膏ボードや壁紙にも目立った損傷は見られませんでした。
また、建築基準法で要求されている性能の住宅(耐震等級1)と免振住宅を同時に実験しました。兵庫県南部地震や熊本地震など、大規模の観測地震動を用いて、繰返し地震動を加えたところ、耐震等級1の住宅は1階部分が倒壊しましたが、免振住宅には損傷は見られませんでした(2606_MPV2)。
まとめ
地震大国日本では、これまで経験したことのない大規模な地震が発生する恐れがあります。一方、しばらくの間大規模な災害が発生しないと、災害に対する意識が希薄になってしまいます。「災害は忘れた頃にやってくる」ということわざが示唆するように、意識が希薄になってきた時に、突如として襲ってくる大規模な災害に対して生命や財産を守るために、どのくらい強い住宅が必要なのか。一度、ご検討されてみてはいかがでしょうか?
(文責:高橋)
本実験の詳細情報や取得データ・映像は、ASEBIにて公開されています。
DOI: https://doi.org/10.17598/NIED.0020-E201601更新日:2026/06/18
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実験準備 : E-ディフェンス震動台を効率良く活用する秘密に迫る!

解説
E-ディフェンス震動台を用いて行う実験で使用する試験体の大きさは、実物大の建物から中小規模の設備機器まで様々ですが、もし、実物大の建物を震動台の上で製作すると、建物の製作だけで数ヶ月~1年を費やしてしまうため、1~2件/年の実験しかできなくなってしまいます。これでは、世界的にも貴重な実験施設であるE-ディフェンス震動台を有効に活用しているとは言えません。実際のところ、2005年度にE-ディフェンス震動台の運用を開始してから2025年度末までの21年間で、計136件(防災科研の研究:43件、防災科研と外部機関による共同研究:35件、外部機関による施設利用実験:58件)の実験を実施しています。どのようにして、これほどの件数の実験を実施してきたのでしょうか?今月は、加振実験映像の紹介から離れ、その秘密に迫ります。
試験体は、天候の変化に敏感な試験体を除き、一般的に屋外で製作されます。一例として、「E202003:災害時重要施設の高機能設備性能評価と機能損失判定のための振動実験」の建物の製作状況をご覧ください(2605_MPV1 )。工場で製作した鉄骨をE-ディフェンス構内に運搬して、実際の建物を作製するのと同様に、周囲に足場を設置して、建設重機を用いて鉄骨を建て込みます。床の型枠を設置(上記映像はここまで)、鉄筋を配置して、コンクリートを打設します。その後、コンクリートが固まり、十分な強度が得られるまで養生をします。実物大建物を用いた実験が不可欠な最大の理由は、「寸法効果(建物や建物を構成する部材が大きくなるほど、強度が低下してしまう現象)」の影響を取り除くことですが、建物の性能は製作方法にも左右されるため、より実際の建物に近い条件で性能を評価・検証できることも、重要な理由の一つです。
これで建物は完成しました。それでは、この建物をどのようにしてE-ディフェンス震動台の上に設置するのでしょうか?
重量が数十トンから数百トンもある建物は、特殊なキャリアーと呼ばれる車両(写真1。搭載可能重量:900トン)を用いて、E-ディフェンス震動台が設置されている「実験棟」内に運び込みます。この車両についている大量のタイヤの上のテーブルが、油圧ジャッキで上下するようになっています。建物を台上で製作して、建物の下にこの車両を入り込ませるためのスペースを確保します。建物下にこの車両を入り込ませて、台よりも高くテーブルを上昇させると、建物は台から持ち上がり、車両のテーブル上に搭載されます。その状態で車両をゆっくりと運転することで、建物を実験棟内に運び込むことが可能となります。実際の運搬の状況をご覧ください(2605_MPV2 )。この映像で運搬しているのは、「E202002:5階建て鉄筋コンクリート造建築物の降伏点・減衰評価実験」の建物です。この建物は、この映像の開始時点で左側に設置されている6基の逆T字型コンクリートブロック上で製作しています。実験棟の大扉の高さは20mで、この試験体の大きさをご確認いただけると思います。
実験棟内に運び入れた建物は、E-ディフェンスの実験棟内に備わっている2基の天井クレーン(写真2。定格400トン)を用いて吊り上げ、震動台上に設置します。「E201806:地盤配管設備等の非構造部材を含む3階建て木造住宅の機能を検証するE-ディフェンス実験」の建物を震動台上に設置する状況をご確認ください(2605_MPV3 )。1棟ずつ建物を震動台上に設置している状況をご覧いただけると思います。震動台にはボルトを通すための穴が開いてあり、同じ位置に建物の方にもボルトを通すための穴を設けます。震動台・建物の穴位置を合わせてボルトを通し、震動台と建物を締結します。これで実験準備は完了です。
このように、建物を震動台の外で製作して、実験を行う時だけ震動台の上に設置することにより、1回の実験で震動台を使用する期間を大幅に短縮することが可能です(震動台を使用する期間:数日間~3ヵ月程度/1実験)。効率の良い実験施設の運用を通して、防災科研の研究だけでなく、より多くの研究者の皆様にE-ディフェンス震動台をご利用いただくことで、社会の防災・減災やレジリエンス向上に貢献できるように努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
(文責:河又)更新日:2026/05/15
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E201505 : 地盤・杭の地震被害モニタリング技術検証のための振動破壊実験

解説
建設する建物の重量に対して、建物下の地盤が軟弱で強度が不十分だと、建物が沈下・傾斜してしまいます。そのため、地盤の強度を高めたり(地盤改良)、適切な建物の基礎構造を選定したりすることにより対策します。建物下の軟弱地盤が厚い場合、最も一般的な対策の一つとして、柱状の「杭」を固い地盤まで建て込む工法があります(図1)。
地震が発生すると、地盤が水平方向に変形して杭に水平力が作用したり、建物が地震で揺れることによって大きな水平・鉛直方向の力が杭の頭部に作用したりします。大地震では杭に作用する力が大きくなり、杭のコンクリート圧壊・引張ひび割れ、降伏・座屈が発生してその強度を喪失します。杭強度の喪失に伴い、杭に支持されている建物に顕著な沈下・傾斜が発生する場合は、杭にも大きな損傷が発生していることは明白ですが、建物に目立った損傷がなくても、杭に顕著な損傷が発生している事例も多数報告されています。例えば、ある建物を解体する際に杭を掘り起こしたところ、過去の地震で杭に顕著な損傷が生じていたことが明らかとなりました。その建物は、数十年の間、何もなかったかのように使用されておりましたが、再度大地震が発生していたら、甚大な被害が発生していた恐れがあります。したがいまして、建物を支えている杭の損傷程度は、建物の残留耐震性能や継続的な使用可否を左右するものと言えます。しかしながら、杭は地中に埋設されているため、その損傷度を目視調査で判定することはできません。
以上のことから、都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクトの一環として、京都大学防災研究所および大成建設との共同研究で、地震による杭の損傷度を評価するためのモニタリング技術の開発・検証を目的としたE-ディフェンス実験を実施しました。
直径8m、高さ6mの円筒形土槽の中に、鋼管杭と鉄筋コンクリート杭(RC杭)の2種類の杭を設置して、その周辺に砂を投入しました。砂を所定の高さに仕上げた後、建物に相当する錘を設置しました(図2・図3)。地震による損傷を検知するため、2種類の杭のうち、RC杭には様々な種類のセンサーを設置しました。E-ディフェンス震動台を用いてこの試験体に地震動を加え(E201505_151020_4)、各種センサーの計測値を注意深く確認しました。
実験映像では、地表面より上の部分しか確認できないため、目視で損傷を確認することはできませんでした。実験終了後に杭周辺の地盤を撤去して、杭の損傷を確認したところ、杭頭部のコンクリート剥離が確認されています(図4)。RC杭に設置した様々な種類のセンターのうち、光ファイバセンサーがこのコンクリート剥離に相当する大きなひずみを検知しました。以上のことから、適切なセンサーを選定することにより、地中の見えない部分の損傷を評価できるポテンシャルが確認できました。一方、この方法では光ファイバセンサーを杭に直接設置する必要があるため、既存の杭への設置方法など、実装・普及までには解決すべき課題が残されております。コストや設置方法を含め、より良い方法の開発・検証を進めてまいります。
(文責:河又)
本実験の詳細情報や取得データ・映像は、ASEBIにて公開されています。
DOI: https://doi.org/10.17598/NIED.0020-E201505更新日:2026/04/17
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E201303 : 地震によって損傷を受けた鉄骨建築物の耐震安全対策に関する実験研究

解説
1995年の兵庫県南部地震では,鉄骨造建物の柱と梁の接合部(柱梁接合部)で,梁が破断する事例が日本国内で初めて確認されました。このような被害を受けた建物は,地震後の傾きが小さく,外装材の被害もあまりみられないことから,地震後の外観目視検査で接合部の損傷・破断を発見することは困難です。しかし,柱と梁の接合部は,構造上きわめて重要な部位であり,その損傷は建物全体の安全性に大きな影響を与えます。したがって,地震後にこのような目視での発見が難しい損傷を検知して,建物の健全性を評価する技術が必要です。この研究では,柱と梁の接合部に損傷を受けた鉄骨造建物がさらなる大地震にみまわれた場合の被害の把握と,大地震で損傷を受けた建物の健全性を推定する為の技術開発を目的として,実大鉄骨造建物を対象とした震動台実験を行いました。
実験計画にあたり,兵庫県南部地震で被害を受けた鉄骨造建物を調査して,対象を3階建ての鉄骨造建物としました。神戸市内に建設された事務所建物を想定して,1981年の耐震規定に従って試験体建物を設計しました。
兵庫県南部地震で柱梁接合部の破断を生じた建物が,大規模地震に見舞われるシナリオを想定して,実験手順が計画されました。実験ではまず,比較のために,損傷の無い鉄骨造建物に想定大規模地震動を入力します。その後,兵庫県南部地震で観測された地震動を,強さを少しずつ大きくしながら柱梁接合部に破断が生じるまで入力します。そして,柱梁接合部に破断が生じた後に,再び想定大規模地震動を入力します。兵庫県南部地震の地震動は,JR鷹取波を採用しました。想定大規模地震動は,南海トラフ地震での神戸市の揺れを想定して作成しました。JR鷹取波と想定大規模地震動の計測震度は,それぞれ6.3と5.4です。
実験では,JR鷹取波の加速度振幅を40%,60%,80%に縮小して入力しました。実験の進行に伴い変形が繰り返されて,JR鷹取波の100%を入力した実験で,柱梁接合部が破断しました(建物全体の揺れ:E201303_131010_08_31,接合部の破断:E201303_131010_08_17)。その後,想定大規模地震動を,50%,100%,150%の強さで入力しました(150%入力時の建物全体の揺れ:E201303_131015_10_31)。
各地震動の入力後に計測した建物の傾きは,いずれの地震動入力後も小さく,このような破断を外観の目視検査で発見することが困難であることが確認されました。柱梁接合部破断後に大規模地震動を入力しても,今回の実験では建物の倒壊等の重大な事象には至りませんでしたが,破断前後で地震による変形の大きさが約2倍になっており外装材の落下等の危険な被害が発生し得ると考えられます。また,柱梁接合部の損傷を検知する技術についても検討が行われました。柱梁接合部の破断によって,建物の揺れの周期が明確に変化すること,および建物に常時生じている微小な揺れや,小型の機械で建物に与えた揺れから建物の揺れの周期を計測可能であることが確認されました。
この研究は,兵庫県と防災科学技術研究所の共同研究,および兵庫県と神戸大学の協力型共同研究として実施されました。関係の皆様に,感謝申し上げます。
(文責:藤原)
本実験の詳細情報や取得データ・映像は、ASEBIにて公開されています。
DOI: https://doi.org/10.17598/NIED.0020-E201303
本実験の詳細な報告書は,兵庫県のホームページでも公開されています。
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk41/e-defenseh25.html
更新日:2026/03/15
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E202102 : 水道管路の耐震補強継手の大型振動台実験

解説
令和6年能登半島地震能登半島地震により,上下水道が広範囲に機能不全に陥り,被災地での生活に深刻な影響を及ぼすとともに,復旧・復興の長期化へと繋がりました。また,同月28日には,埼玉県八潮市において,下水道埋設管の損傷に起因した大規模な道路陥没事故が発生し,1年後の2026年2月現在でも復旧工事が続いています。2026年1月には,国土交通省が,こうした水道管路の耐震補強・老朽化対策を目的として,災害時の支援拠点となる病院、避難所等に繋がる水道管路を中心に,耐震基準を見直す方針であることが報道されています。
一方,基幹水道管路のうち耐震性のある管路の割合は,令和4年度末時点で42.3%と低い状況にあり(※1),今後の災害時の安定的な給水と早期復旧可能な体制確保のためには,地中埋設管路の耐震補強を速やかに推進することが喫緊の課題となっています。過去の地震における,埋設管路被害を検証すると,例えば,2011年東北地方太平洋沖地震では,代表的な水道管路であるダクタイル鉄管の被害原因は,管が継手部で抜けてしまうことによるものが約7割を占めています。したがって,管の継手部を補強して抜けにくくすることが,効率的な補強方法であることがお分かりいただけると思います。以上のことから,大成機工株式会社,金沢大学との共同研究の一環として,地盤中に埋設された実物大のダクタイル鉄管を用いた水道管路を対象としたE-ディフェンス大型振動台実験を実施しました。 実験では,傾斜地盤の中に,未補強継手および耐震補強継手を有する水道管路試験体を設置しました。継手の耐震補強方法として,バイパス管路を設置せずに,継続的に周辺地域に給水することが可能な工法を選定しました。この試験体にE-ディフェンス震動台を用いて地震力を加えることにより,意図的に斜面を崩壊させて,継手部周辺に大きな地盤変位を作用させました(E202102_211026_1)。その結果,未補強継手は抜けて,周辺の土が管内に流入することにより,ライフラインとしての機能は完全に喪失しました(E202102_211026_3)。一方,耐震補強継手では,継手が離脱することなく,管内への土の流入は確認されませんでした(例:耐震補強金具を用いた管内映像,E202102_211026_2)。実験後に,管内に水圧をかけたところ,継手部の損傷による圧力低下や漏水は検出されず,水道管路としての機能を維持していることを確認いたしました。
この実験研究の成果が,水道管路の耐震補強の推進の一助になれば幸いです。また,実験にご参加いただいた大阪市水道局,岡山市水道局,神戸市水道局他の関係機関にもご協力いただきました。ここに篤い謝意を表します。
(文責:河又)
※1:国土交通省,水道事業における耐震化の状況(令和4年度)
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply/newpage_38800.html
ASEBIにて,詳細な実験データを公開しています。
DOI: https://doi.org/10.17598/NIED.0020-E202102
更新日:2026/02/16
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E200505 : E-ディフェンスによる既存不適格建物補強・無補強実験

解説
昭和56年の建築基準法改正以前に建てられた,古い木造住宅の倒壊現象の再現および耐震補強工法の開発・検証を目的として,2005年11月,2棟の木造住宅試験体を対象としたE-ディフェンス実験を実施しました。
実験で使用した2棟の試験体は,実在の築32年の木造住宅(木造軸組工法)で,同じ構造仕様及び間取りで建てられたものです。この2棟を丁寧に解体して,部材を運搬,E-ディフェンス震動台上で再組立てすることで「移築」しました(写真奥行方向がX方向,写真横方向がY方向)。1棟は何もしない「無補強試験体」(写真右),もう1棟は梁柱接合部の補強金物,構造用合板,筋交いを追加設置することで耐震補強を施した「耐震補強試験体」(写真左)としました。「無補強試験体」の評点※1は,1階は1.17(X方向)および0.50(Y方向),2階は1.23(X方向)および0.85(Y方向)です。一方,「耐震補強試験体」の評点は,1階は1.97(X方向)および1.84(Y方向),2階は1.94(X方向)および2.01(Y方向)となっており,大幅に耐震性が向上しています。
1995年兵庫県南部地震において,JR鷹取駅で観測された地震動(震度7相当)で加振したところ,「無補強試験体」が完全に倒壊しました(E200505_051121)。このような住宅1階部分が倒壊する現象は,兵庫県南部地震でも数多く発生しましたが,それから約30年経過した2024年能登半島地震でも確認されております。「耐震補強試験体」は,倒壊は免れましたが,構造用合板の浮上りやはずれ,筋かいのはずれ,金物の緩みなどが確認されており,損傷状況を評価して,評点を再計算したところ,1階で0.93(Y方向)となりました。
その後,倒壊した「無補強試験体」を撤去して,損傷した「耐震補強試験体」を再度JR鷹取駅で観測された地震動で加振すると,「無補強試験体」と同様,完全倒壊に至りました(E200505_051124)。
近年の大規模地震では,繰返し大きな地震動の発生が観測されております。複数の地震動により,建物の損傷程度が蓄積されることがありますので,お住いの住宅の耐震性能を的確に把握して,状況に応じた対応をシミュレートしておくことが重要です。
(文責:河又)
ASEBIにて,詳細な実験データを公開しています。
DOI: https://doi.org/10.17598/NIED.0020-E200505
※1:評点は、保有耐力/必要耐力で算出します。1.0で新耐震基準を満たす最低限の耐震性能、1.5以上で「倒壊しない」と評価されます。また,1.0未満の場合は倒壊の可能性が高いことを示します。更新日:2026/01/15
